男娼買春で獲得断念 D・スチュアート事件の一部始終
86年2月、「男娼を買春」という前代未聞の事態で入団がご破算になった外国人投手がいた。
「大丈夫ですよ、岩本さん。人の噂も七十五日。開幕する頃にはみんな忘れてますよ」
86年1月末、ロスにいた岩本尭巨人渉外担当補佐からの電話に王監督(当時)はこう答えた。
就任1年目に続き3位に終わり、2年連続で優勝を逃した王巨人は、助っ人投手の獲得に動いていた。前年、2桁勝ち投手は斎藤雅樹、西本聖、江川卓の3人だけ。規定投球回数に達したのもその3人だけだった。
岩本担当補佐が目を付けたのが当時フィリーズに在籍していたデイブ・スチュアート(28)。187センチ、91キロから投げ下ろす150キロ超のストレートと高速スライダーが武器の本格右腕だった。メジャー5年間で30勝35敗19セーブ。2年間で年俸200万ドル(当時のレートで約4億円)で合意したと米メディアには報じられていた。
ところが、事態は急変する。スチュアートの逮捕が1月27日のスポーツ紙にスッパ抜かれたのだ。