「一本足打法」生みの親 荒川博氏は清宮幸太郎をどう見るのか
今夏の甲子園5試合全てで安打を放ち、19打数9安打の打率.474、2本塁打、8打点。フィーバーを巻き起こした早実の清宮幸太郎(1年)の活躍に、目を細めている人物がいる。通算868本塁打の世界記録を持つ王貞治(現ソフトバンク球団会長)を二人三脚で育て上げた師匠であり、当時の巨人打撃コーチだった荒川博氏だ。「一本足打法」の生みの親でもある荒川氏も早実出身。19日に行われた高校野球秋季東京都大会の1次予選3回戦・保谷戦でも2試合連続となる推定130メートルの特大場外弾を放ち、3打数2安打4打点の活躍で10月10日開幕の秋季都大会本大会へ導くなど大活躍の怪物を、「大先輩」はどう見たか。
■現段階では王よりスケールが大きい
――清宮フィーバーは凄まじかった。
「王もそうだったけど、100年に一人の逸材だね。警備員を増やしたりなんて心配はこれまでなかった。甲子園の朝一番の第1試合が超満員になることもなかった。それだけで凄い。まるでベーブ・ルースだよ。甲子園で内角を引っ張ってライト線へ二塁打を打った打席(3回戦の東海大甲府戦の第5打席)があったでしょ。ファウルにならないあの打ち方は絶妙。教えられたものというより、天性のものですよ」
――早実は甲子園4強の快進撃でした。
「一人飛び抜けた選手がいると、みんなが引っ張られてうまくなることがある。予選だって日野(西東京大会5回戦=9対8)とか(5点差を逆転した)東海大菅生(同決勝=8対6)戦は、負けてもおかしくなかった。ツキのある男なんだ。だからボクは100年に一人と言うんだよ。関東一高のオコエもいいけど、打撃はまだ70点。清宮の方が上でしょう」
――清宮の打撃の技術的な良さは?
「ステップと同時に打っていること。実際は足が先に下りてから打つんだけど、先に打つんだという気持ちじゃないとステップもできないし、間に合わない。王には『足が上がっているうちに打て』とよく言った。それと清宮はヘッドスピードが相当あるね」
――それ以外の良さは?
「人間的なオーラだよ。こう言っちゃなんだけど、決して二枚目じゃないのに、野球を見たことがないお客さんがあれだけ球場に駆け付ける。みんな彼を見たいんだ。そういう人間性、スター性。野球界の王様になれる資質がある。あっちの王と一緒だな。中学2年生で14歳だった頃の王を初めて見た時は右打ちで悩んでいた。左で打たせたら『はい』って素直に言って、いきなり打った。早実に入れたら全国制覇できるって、ボクが進学を勧めたんだから。王は素直さを持っていた。清宮には将来的には(テニスの)錦織とチャン(コーチ)みたいな信頼できる指導者が必要だな」
――その王さんと清宮を比較すると?
「スケールが違う。王は中学2年の時、175センチで75キロ。清宮は2回りか3回りは大きい(184センチ、97キロ)。清宮は足(のサイズ)が30センチもあるけど王は27、28センチ。王があの体でホームランをあれだけ打つと誰が思った? 現段階では清宮の方がスケールが大きい」