「一本足打法」生みの親 荒川博氏は清宮幸太郎をどう見るのか
――清宮に課題はありますか?
「予選の時はあまり芯に当たっていなかった。金属バットだから飛んでいたけど、プロは木製だからね」
――打撃フォームはどうでしょうか?
「あまり良くないね。構えが良くない。バットを左手で持って、左足の方に傾いて構えているように見える。捕手寄りによっかかっちゃってるというか、中心線が崩れているんだよ。バットは右手で持って、地面からまっすぐ立って構えないと、速球に差し込まれてしまう。王は手と足のバランスが悪かったから一本足打法に挑戦させた。清宮はちょっとスタンスが広過ぎる。肩幅くらいにした方がまっすぐ構えられる」
――レベルが高い投手には苦労したところもありました。
「(甲子園)準決勝の仙台育英戦は、ただの人になっちゃったね」
――高校日本代表で左ヒザを痛めました。
「プロのホームランバッターでは、おかわり君(西武の中村)や筒香(DeNA)はケガが多い。太り過ぎだからだよ。清宮もケガをしない頑健な体を作ること。走って走って走りまくって、体を絞った方がいい。体重を落とせば体がしなるようになって打球がもっと飛ぶ。金田方式だな。王、長嶋もケガをしない選手だった。みんなが来る前にグラウンドを30周くらい走るとか、天性をもっと磨いて欲しい。王の半分練習すれば、王を超える打者になると思うよ」
■まだまだ“おぼっちゃま”
――荒川さんは早実から早大。後輩の斎藤(現日本ハム)も同じでした。清宮も早大進学でしょうか?
「清宮は早実からプロですよ。大リーグが夢と言ってるんだから。早大だって(清宮に)来ないでくれって言うくらいだよ。もし壊しちゃったら大変だって。ハハハ」
――早実の和泉監督にはどのような指導を期待しますか?
「監督ってのは難しい。他に部員が何十人もいるわけだし、試合もやる。個人に付きっ切りで指導するわけにはいかないんだよ。早実は昔から自主的な校風もあるからね」
――今の早実は勉強も忙しいそうです。
「早実OBのボクが言うのもなんだけど、文武両道っていうけどさ、清宮はプロに行くんだから、野球学校に行って野球漬けってのもありだったかなとも思う」
――将来的にメジャーの夢を公言しています。
「アメリカに行くより日本で通算1000本塁打に挑戦して欲しいね。王の記録を抜いてもらいたい。といっても、50本を20年だから簡単ではないよ。大リーグに行きたいなら、もっと守備力を上げて走れるようにならないと。一塁だけでなく、三塁とか外野にも挑戦しないとダメ。守れないとメジャーは厳しいよ。守れればA・ロッド級も夢じゃない」
――清宮にアドバイスは?
「相撲をやったとしても横綱になりそうだし、ラグビーだって相当な選手になったでしょう。野球を選んでくれたのが、ボクはうれしい。今は楽しんでやればいい。いずれは王のような『殺気』を身につけて欲しい。相手投手がひるむようなね。まだまだ、“おぼっちゃま”だから。あとは上級生にねたまれないように、率先して一番練習をやって、仲間から尊敬される選手にならないとね」
▽あらかわ・ひろし 1930年8月6日、東京生まれ。早実、早大を経て53年に毎日(現ロッテ)入り。61年に引退。62年から70年まで巨人打撃コーチ。王貞治に一本足打法を指導する。真剣を使った練習は有名。73年から打撃コーチを務めたヤクルトで74年から76年まで監督。現在は「荒川博野球塾」を主宰し、少年野球を指導。NPO法人日本ティーボール協会副会長として普及に努めている。