お立ち台でも緊張感なし 中田翔はまるで漫画「あぶさん」
「ありがとうございま~す」
緊張感のない第一声。難敵オランダを撃破する立役者となった中田(27=日本ハム)は、スタンドの大歓声に迎えられてお立ち台に上がると、声を張り上げるアナウンサーをすかすように、「疲れました」と続けた。
無死一、二塁から始まるタイブレーク制に突入した延長十一回。先頭の鈴木(22=広島)がきっちりと犠打を決め、「バントするのであとは頼みました、との言葉をもらった。先輩として意地でも打ってやんないとダメだと思った」と、決勝の2点適時打を左前にはじき返した。一塁ベース上で咆哮し、左手を突き上げたが、興奮したのはその一瞬だけだった。
「侍ジャパンの看板を背負った代表選手が、責任感と重圧でガチガチになっている中、中田は良くも悪くも普段通り。代表関係者に聞くと、宮崎での合宿中から夜はほとんど宿舎にいないって話です。本大会が始まっても同じで、六本木あたりで英気を養っているというんですから中田らしい。日頃から、漫画のあぶさんよろしく『酒が残っているくらいの方が調子がええ』と豪語する男ですからね。日本ハムでは、飲みに誘われた若手が中田と一緒だったというだけで外出禁止になるという問題児ですが、どうしたって気負ってしまう国際試合では、そのくらいの緊張感のなさがプラスに出るってことでしょう」(日本ハムOB)