具志堅戦も裁いた伝説のレフェリー 山中慎介の敗因を解説
「チャンピオン、ピンチ!チャンピオン、ピンチ!」
実況アナの悲痛な叫び声が何度も響いた。
15日、ボクシングWBCバンタム級王者の山中慎介(34)が、まさかの4回TKO負け。具志堅用高氏の持つ13回連続世界戦防衛の日本記録にあと1つと迫りながらも、挑戦者で同1位のルイス・ネリ(22=メキシコ)に屈した。
山中は3ラウンド終盤に連打を食らうと、4ラウンドはルイスのラッシュになすすべもなし。「神の左」と称される絶対的な左のパンチを繰り出す間もなく、タオルが投げ入れられた。プロ30戦目にして、初黒星。あっけない幕切れに、解説を務めた具志堅氏も言葉を失っていた。
日本ボクシングコミッション元事務局長で、3万マッチを裁いたレフェリー、森田健氏はこう解説する。
「挑戦者にパンチ力があることをわかっていながら、打ち合ってしまった。確かに山中の左は強烈ですが、確実に当てたと言えるのは2発くらい。体の柔らかさでは挑戦者の方が上でした。それとガードの差です。ルイスはきちんとアゴをカバーしていたが、山中は右がガラあきだった。腕を上げると腰の入った一発が打てない。パンチ力に長けたボクサーにありがちな欠点が勝敗を分けてしまいました」