長野の広島移籍はFA補強の犠牲というよりまさに“栄転”だ
■有効活用という意味では理想的な移籍
そもそも長野は確かに巨人の功労者だが、もしあのまま巨人に残っていたとしても、今季は外野のリザーブとしてベンチ要員になっていた可能性が高い。巨人の外野にはレギュラー確約の丸の他に、実績豊富な亀井善行と陽岱鋼、さらにはゲレーロもおり、昨年ブレークした岡本和真が外野に回ることだってある。
そう考えると、長野がプロテクトから外れたのは、一概に巨人の冷遇措置とも言い切れない。盛りを過ぎた印象があるとはいえ、まだ34歳なのだから、巨人よりも出場機会のありそうな球団に移籍して再スタートすれば選手寿命が延びるかもしれない。いや、それどころか全盛期の打棒が復活するかもしれない。長野は巨人をお払い箱になったのではなく、より自分に適したプレー環境を求めて巨人を退団し、広島に三顧の礼を尽くして迎えられたとも解釈できる。まさに栄転だ。
要するに、今回の長野の広島移籍は「巨人」「プロテクト漏れ」「人的補償」という3つの言葉によって悲劇的なイメージを抱かれがちだが、一人のプロ野球選手の有効活用という意味では理想的な移籍だろう。長野は「巨人」という、ひと昔前の形骸化されたブランドを失ったかわりに、今が旬の広島で熱狂的なファンを増やしている。黒田や新井のカリスマ化を見てもわかるように、引退後のセカンドキャリアにおいても今は広島のほうがいいのかもしれない。