球宴で2戦連発 阪神・原口選出の疑義を封じ込めたドラマ力
と、そんな中で放った代打ホームランだ。だからといって先述の問題は解決していないし、それとこれとは別の事案なのだが、原口という選手がいかに稀有な星の下に生きているかを思い知らされる。正直、フィクションでも書くのがためらわれそうな、あまりにできすぎたドラマだろう。
思えば、原口は捕手として一軍デビューを果たした当初から、そういうドラマ性を感じさせるところがあった。2016年シーズン序盤の4月に3桁背番号の育成選手契約から支配下登録選手に昇格すると、まだ2桁の新しい背番号(94)のユニホームが用意できていない中、別のユニホームを借りて出場した一軍デビュー戦で、いきなりプロ初安打を記録した。
これだけでもドラマチックなのに、翌月にはサヨナラ本塁打など印象に残る活躍で一気にレギュラーの座をつかみ、月間MVPを獲得。さらに、オールスターにも初選出されるなど、シンデレラストーリーを演じた。
また、今季は先述の大腸がんから一軍復帰を果たした6月4日のロッテ戦でいきなりタイムリー二塁打を放ち、さらに、9日の日本ハム戦ではサヨナラ安打を記録。原口はいまだに一度も規定打席に到達したことのない選手だが、どういうわけかドラマチックな場面にいることが多く、新聞の見出しになりやすい選手だ。これにマンガみたいなキャラクター性が加われば、第2の川藤幸三になるのではないか。
もちろん、依然としてオールスター選出についての違和感はある。しかし、原口のドラマ力によって、それを「口にできない空気」が生まれたのも、また事実だろう。