「監督室の鍵をかけられ顔と頭を5発」ある現役選手の告白
確かに、一昔前は監督やコーチによる鉄拳制裁は珍しくなかった。
「私も殴られたし、手を上げました」
と言うのは、評論家の高橋善正氏だ。高橋氏は東映、巨人での現役生活を終えた1978年から巨人、中日、日本ハム、横浜大洋で投手コーチを歴任。97年には社会人シダックスのコーチ、2008年からは母校・中大野球部の監督も務めた。
■右ストレートで数メートル吹っ飛んだ
「昔はプロでもそれが当たり前でした。殴られた方の話で最も印象深いのは、東映時代のこと。ナイター後に遠征先の宿舎で夜中まで麻雀をやっていた。投手コーチだった土橋正幸さんにそれがバレ、私を含めた5人が部屋に集められてね。正座で説教をされているうちに、投手の松本俊一さんという真面目な先輩が、『殴ってくださいっ!』と言いだした。ちょっとちょっと、勘弁してよと思ったのも束の間、土橋さんの右ストレートが松本さんの顔にめり込み、吹っ飛んだ松本さんは数メートル先のふすまに突っ込んだ。私も一発もらいましたが、気の毒だったのは5人目の森安敏明です。1発目のパンチを空振りした土橋さんの頭に血が上り、一番強烈なストレートを顔面に受けた上に、2発の蹴りももらってもん絶していた。土橋さんは最後に『おまえら、もっと体を大事にしろ!』と言って部屋を出ていきました。その言葉にみんなずっこけて大笑い。松本さんなんか1カ月間はムチ打ちに悩まされたけど、後腐れはなかった。最初に言ったように、鉄拳制裁が当たり前の時代でしたから」