「監督室の鍵をかけられ顔と頭を5発」ある現役選手の告白
そう言う高橋氏はアマチュア野球の指導者に転じて鉄拳指導を封印したが、プロのコーチ時代は「選手に手を上げたことはある」と告白する。
■マウンドから一目散に逃げた投手
巨人で二軍投手コーチを務めていたある年の試合中、それまで8回無失点の好投を続けていた藤城和明が九回に入って1死から2点を失った。
「ベンチを出て『あとツーアウトで完投だ、踏ん張れ』とハッパをかけに行こうとマウンドに向かったら、藤城が三塁ベースに向かって一目散に駆けだした。あとで『殴られるかと思って』と聞いたときには、やはり考えさせられた。厳しくしたのは愛情のつもりだったが、どういう理由があっても手を上げるのはいけません。今の時代はなおさらです」(高橋氏)
鉄拳制裁と言えば、星野仙一氏(故人)が有名だった。高橋氏は「さすがに拳で選手を殴ったことはない」というが、闘将はもっと苛烈で顔面が変形するほど選手を殴った。
ロッテから中日に移籍して、それを目の当たりにしたのが落合博満元監督だった。星野氏が2度目の中日監督を退任した3年後、チームを率いることになった落合元監督は契約前のコーチ陣一人一人に、
【いかなる理由があっても選手には手を上げてはいけない。守れなかった場合は解雇する】
と記した念書を差し出し、そこへサインすることを正式契約の条件にしたのだ。