日本高校野球は環境変化 “先駆者”米高校球界の過酷な現実
一方、プロ球界入りを目指す高校生は、夏休みに入るとサマーリーグで試合を行い、地域の選抜チーム、市の選抜チーム、複数の市を合わせた連合チームと昇格し、国内外への遠征を伴うリーグであるトラベルボールに参加するのが一般的だ。より上位のリーグに所属すれば、それだけ関係者の注目を集めやすくなる。しかも、もし、これらの階層の最上位にあるショーケースやエリアコード・ゲームに参加できれば、大リーグ球団からドラフトで指名されなくても、奨学金を得て大学に進学する機会が増える。
「教育の一環」という名目で行われる日本の高校野球に比べ、米国の高校野球には「プロ球界に入る」「奨学金を得て大学に進む」と明確な目標を据えた枠組みがある。何より、大学の奨学金を得たり、ドラフトで指名される可能性が高まれば、多くの保護者は専門家の指導や、優れた指導者のいるチームに参加させるなど、「1年間で安くて5000ドル(約53万円)、高ければ1万5000ドル(約160万円)はかかる」とされる出費も惜しまない。
プロ球界を目指す米国の高校生は、幾層にも分かれている厳しい関門をくぐり抜けなければならず、あたかも「一獲千金」を目指す先物取引の商品となっているかのようである。そこには日本の高校生とは異なる、米国ならではの制度的な問題点が横たわっているのだ。