センバツ球児の評価に影響大…無観客でスカウト入場禁止も

公開日: 更新日:

「球場に入れないとなると、頭が痛いですよ」

 セ球団のスカウトは困り果てた顔でこう言った。

【写真】この記事の関連写真を見る(30枚)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、無観客試合を前提に開催する方向になった選抜高校野球。状況次第では中止の可能性も消えていない。

 その煽りを食いそうなのが、プロ野球12球団のスカウトだ。

 高野連は無観客で開催する場合、スカウトの立ち入りを禁止することを検討。スカウト側は各球団1~2人だけでも入場できるよう、高野連と交渉しているとの話もあるが、5日付のスポニチは、「プロ野球12球団のスカウトは無観客開催の場合でも視察はできないとの方針も固まった」と報じた。

「全国大会をチェックするメリットは、たくさんある」

 とは、冒頭のスカウト。

■5万人の中のプレー

「スカウトは普段、全国の各担当地域に散らばっているため、全員が一堂に会して試合を見る機会は、甲子園などの全国大会やU18などの国際大会に限られる。ときに編成幹部も交え、複数のスカウトで評価する“クロスチェック”ができ、担当スカウトだけでは気づかない才能を発掘することもある。また、『5万人』の大観衆の中で、選手がどういうプレーをするのか、大舞台に強いのか、もしくは萎縮してしまうのか、精神面を知ることができる。試合前のシートノックや練習態度などテレビには映らない部分も確認できる。例えば、捕手は二塁送球の肩をアピールするために、本塁ベースに近い位置で構えることもある。そんな目立ちたがり屋の性格の良し悪しは別にして、球場に入ることができず、テレビのみのチェックとなると、そうした細かな部分はわかりづらい。正確な評価をすることが難しくなります」

 センバツの出場選手の中には今秋ドラフトの1位候補が何人かいる。2018年夏から4季連続出場となる明石商(兵庫)のエースで最速151キロ右腕の中森俊介、2季連続の出場となる花咲徳栄(埼玉)の主将で高校通算47本塁打を誇る井上朋也らがそうだ。

正確な評価ができない

 甲子園は、その活躍次第で新たなスターが誕生する。かつての松坂大輔田中将大がそうだった。昨春、エース兼4番でチームを優勝に導いた東邦の石川昂弥中日)は、昨年のドラフトの1位入札が3球団も競合したが、パ球団スカウトはこう言う。

「今年の高校生に関していえば、昨年の奥川(星稜)や佐々木(大船渡)のような突出した選手がいない。なので全国区の甲子園で、どれくらい成長を遂げるのかを楽しみにしていた。甲子園という場所は観客によって空気が一変する。大声援に後押しされ、普段は出ないアドレナリンが出て、120%、150%の力を発揮し、才能が花開くこともある。無観客試合ではそうした効果は生まれづらいですから」

 ただでさえ、スカウトたちは“コロナ禍”に悩まされている。

「一斉休校になり、来客お断りになっている高校もあるため、練習視察も難しい。来客OKでも、万が一を考慮して、訪問を自粛する球団は多い。センバツが無観客開催もしくは中止という方向性を示したことは、センバツ後に予定されている『U18合宿』や、春季大会にも影響が及ぶのは必至。そこでもスカウトの立ち入りが制限されるようなら、さらに高校生の評価はしづらくなります」(前出のパ球団スカウト)

■1位は大学、社会人に

 そんな中、スカウトの間では、「今年は大学、社会人に人気が集中するかもしれない」という声が出始めている。前出のセ球団スカウトが言う。

「大学生や社会人よりも伸びしろがある高校生は、ひと冬越したセンバツで前年秋からどれくらい成長しているかをチェックする格好の機会になる。そして夏に再度、春からの伸びしろなどを確認した上でランク付けをするため、今年に関しては正確に評価することが難しくなる。大学、社会人も状況次第では無観客試合や中止になる可能性もあるものの、彼らについては年齢を重ねている分、高校生よりも評価や情報の蓄積がある。まして今年は大学、社会人で投手は早川隆久(早大)、野手では佐藤輝明(近大)ら1位候補がゴロゴロいますからね」

 プロは正当な評価をしにくい高校生より、大学、社会人の指名を優先して当然。今秋ドラフトは大学、社会人が1位を独占、高校生の評価はガタ落ちすることになりそうだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    阪神・西勇輝いよいよ崖っぷち…ベテランの矜持すら見せられず大炎上に藤川監督は強権発動

  2. 2

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  3. 3

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  4. 4

    阪神からの戦力外通告「全内幕」…四方八方から《辞めた方が身のためや》と現役続行を反対された

  5. 5

    巨人・小林誠司に“再婚相手”見つかった? 阿部監督が思い描く「田中将大復活」への青写真

  1. 6

    元ソフトバンク「伊奈ゴジラ」の転落人生…淡路島で盗み84件総額472万円、通算5度目の逮捕

  2. 7

    米田哲也が万引きで逮捕!殿堂入りレジェンド350勝投手の悲しい近況…《苦しい生活を送っていたのは確か》

  3. 8

    東洋大姫路・岡田監督が吐露「本当は履正社に再任用で残る予定で、母校に戻るつもりは…」

  4. 9

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 10

    レイズ看板選手「未成年への性的虐待容疑」で逮捕も…ドミニカは殺人も銃撃も「無罪放免」の実態

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    フジテレビ「第三者委員会報告」に中居正広氏は戦々恐々か…相手女性との“同意の有無”は?

  3. 3

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  4. 4

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  5. 5

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  1. 6

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 7

    冬ドラマを彩った女優たち…広瀬すず「別格の美しさ」、吉岡里帆「ほほ笑みの女優」、小芝風花「ジャポニズム女優」

  3. 8

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 9

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」