コロナ禍と酷暑のなか交流試合強行 日本高野連を直撃した
連日、多くのコロナ感染者が出ているうえ、35度を超す酷暑が続く中、交流試合を開催しているのが日本高野連だ。なぜ、いま、甲子園で高校野球をやる必要があるのか、感染者が出たらどう対処するつもりか。日本高野連の小倉好正事務局長(62)に聞いた。
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――連日、多くの感染者が出ている状況で、全国から高校生を呼んで交流試合を行うのはなぜか。
「(少し時間を下さいと、数十秒考えた後に)春のセンバツの中止を発表した3月時点では、新型コロナウイルスという未知のものに対して、どのように対策していいか誰も分かりませんでした。それが、この数カ月でいろいろな知見が積み重なってきた。全体の感染者数は増えているから、当然、リスクをゼロにはできないが、リスクを下げられる可能性は3月よりも上がっているのではないか。コロナと共存することが求められる今、我々がこの大会を開催することで、今後のスポーツイベントの在り方の指針にもなる。いわゆる挑戦というのも、この大会の意義だと考えます」
――八田会長はセンバツを中止にした日の会見で、「32校には何らかの形で甲子園に来ていただけたら」と発言しながら、夏も中止に。今大会は、「何もやらないじゃないか」という批判をかわすためのアリバイ作りなのか。
「夏の大会は、地方トーナメントから全国大会の決勝まで一連のもの。8月10日に全49校の代表が出揃うことは無理だろうと判断しての中止です。実際、8月までに各県代替大会が終わったところもあれば、現在もまだ途中の県もある。一方で、我々は32校の選手のために出来ることはないかと、ずっとチャンスを探っていた。そんな中で、5月25日に政府がイベント緩和の指標を発表。今出来ることをと、なんとか絞り出したのが、この交流試合です」
――現在、政府は「Go To トラベル」など、観光産業や経済活動を促す政策を取っている。政府からの支援や後押しはあったか。
「後援の朝日新聞や毎日新聞、甲子園球場にはお世話になっていますが、これは独自の大会ですし、政府からは何もありませんでした」
――交流戦を発表した時とは状況が変わっているが、もし、大会中に感染者が出た場合、どのように対処するのか。
「緊急対策本部というものを設置しています。感染が発覚したら、即座に会議を開く。そこで状況の判断や消毒などの対応、大会の継続か、中止の判断がなされます。ガイドラインは公開していませんが、内規として定められています」
「熱中症対策も手を抜かずやってきた」
――感染予防のための具体的な対策はどのようなものか。
「専門家の指示に従って、出来る限りのことをしています。例えば、運営役員にはもちろん、審判にもポケットサイズの消毒液を常備させ、試合中もこまめに消毒させています。また、審判には飛沫を防ぐため、口周りのフェースシールドを着けさせた。他にも、選手たちが使うヘルメットなどの用具の消毒液は、植物性の専用のものを配りました」
――関西以西の球児たちはもともとバス移動となっていたはずだが、新幹線を利用した学校もある。
「バスで来るにあたり、加盟校からの状況説明や、希望もありました。バスならば実際、どれくらいの時間がかかるのか試算をしたところ、非常に長かった。なるべく球児が良いコンディションで翌日の試合に臨んでほしいということで、専門家の指示のもと、移動手段に変更を加えました」
――18年夏の甲子園の期間中、選手や保護者などを合わせて343人が熱中症と診断された。新型コロナウイルスの対策に奔走していたことと思うが、一方で、毎年議論が起きるこちらの対策は、どのようにしているのか。
「コロナ、コロナと騒がれているが、我々はこの問題も並行して、手を抜かずにやってきました」
――それでは、観客への対策は。
「なるべく屋根のあるエリアの高段に配置することで、直射日光を避け、なおかつ風通しを良くしました。マスク着用も義務付けていますが、状況に応じて外すことも認めています」
――選手へは。
「例年以上に水分補給の呼びかけを徹底。ベンチには専門医を置き、試合が白熱しても、水分補給がなおざりにならないように工夫しています。さらに、今年はコロナ対策で、例年はコップで飲んでいたドリンクを廃止して、球児それぞれにペットボトルドリンクを支給。シャーベット状のものもあり、必然的に握ることになるので、これが手掌冷却効果といって、体の中の体温を下げる役目にもつながっている。他にも今年からはアイスバスといって、熱中症になった時に、全身をドボンと水に漬かれるようなプールも準備しています」
――審判には。
「去年は試験的に使用したアイスベストといって、内部に保冷剤を設置できるものを導入。五回に保冷剤を交換するので、審判はかなり快適になったと思います」
(聞き手=杉田帆崇/日刊ゲンダイ)
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