渋野は全米Vならずもスランプ脱出 心・技・体で“原点回帰”
考える楽しさ
スイングも以前のように前傾姿勢が深くワイドスタンスに戻っている。
1年前に全英に勝ってから、「米ツアーで戦いたい」という気持ちが強くなっていった。そのためオフはコーチとタッグを組み、飛距離アップを目指してスイング改造やトレーニングに取り組み、弱点と言われたアプローチの「引き出し」を増やす練習に取り組んだ。
ところがコロナ禍で世界中で試合中止が相次ぎ、オフの練習成果を試せないまま実戦に突入したが、オフの取り組みがまったく生かされなかった。
それどころか、グリーン回りからのアプローチではこれまで見られなかったようなミスまで出始めた。
2カ月間に及ぶ海外転戦で打ちのめされ、帰国して初戦の「三菱電機レディス」では今年4度目の予選落ち。そこで、「去年がうまく行き過ぎた。去年の自分にすがっていても仕方ない、初心に戻って頑張るしかない」と原点回帰を決めてから、徐々に復調していった。
プロの世界では「スイング改造は危険を伴う」という言葉がある。オフの短い期間中に、あれも、これもとレベルアップを求めると、もともとあった持ち味までなくし、自分自身を見失って不振に陥ってしまうというのだ。
渋野はオフに身に付けた不必要なモノを捨てて、ゴルフに対する考え方もスイングもシンプルになり、ようやく今何をやるべきかがはっきりしたといえる。それはある意味、指導を受けてきたコーチと距離を置くということなのかもしれない。コーチの言葉をうのみにするのではなく、自分であれこれ考える楽しさに気づいたようだ。
「アメリカの悔しさはアメリカで晴らす」意識を持ち続けており、「来季は自分のゴルフを完成させるように頑張っていきたい」と米ツアー参戦を目指す。これから進むべき道がはっきり見えてきたわけだ。