箱根13年ぶり総合Vの駒大監督 辞職勧告→排斥からの復活劇
学生3大駅伝単独最多の22勝を誇ろうが、2020年11月の全日本大学駅伝を制しようが、箱根駅伝(2~3日)での駒澤大の前評判は前回大会の覇者・青学大、実力上位の東海大、東洋大、明治大、早稲田大と優勝を争うレベルにはない――が大方の見方だった。
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ところが、往路3位の好位置から復路の最終10区を2位で迎えると3年生・石川が残り2・1キロから一気に猛スパート。後方の監督車の大八木弘明監督から「やったな! おまえは男だ!」という激励の声を背に受けながら、大逆転でゴールのテープを切った。
13年ぶり7度目の優勝を果たした駒大は、2000年の初優勝から9年間に6度の総合優勝を飾って「平成の常勝軍団」と呼ばれたが、08年の優勝以降は総合優勝から見放され、09年(13位)と18年(12位)はシード権を手放すことになった。
「18年の11月には、思わぬ雑音に足を引っ張られた」と某陸上関係者が声をひそめて続けた。
「駅伝界の名将と言われた大八木監督が駒大学長らから『辞職勧告』を受けたのです。駒大OBで元プロ野球選手の中畑氏も反大八木派としてメディアに登場。金銭問題を理由に辞職を迫ると、それを『パワハラである』と大八木監督の代理人弁護士が駒大監査室に告発する騒動に発展。内紛、排斥と騒ぎになった。スポンサー企業から陸上部に支払われていたアドバイザー料が問題にされたのですが、第三者委員会は『どちらもおとがめなし』の結論を出しました。大八木監督は、同じ福島県出身で駒大の5学年上の先輩でもある中畑氏を『兄貴』と呼んで慕い、11年の東日本大震災の後は一緒に被災地を回ったり、本当の兄弟のような親密な関係だった。大八木監督は人間不信に陥った」
アメとムチを使い分ける
そんなトラブルを乗り越えての逆転Vだった。
スポーツライターの和田悟志氏がこう言う。
「大八木監督は<厳しい叱咤激励指導>で実績を残してきましたが、青学大の原監督ら大学陸上界全体が<選手の自主性を尊重する>流れとなり、ここ数年来、大八木監督も<アメとムチを絶妙に使い分ける>指導法に変わりました。今回は選手起用も素晴らしかった。復路では3年3人に2年と1年を各1人起用し、最上級生の4年はゼロでした。往路も1年と2年が各2人で4年1人に3年はゼロ。下級生中心の布陣で勝負をかけ、優勝を手繰り寄せました」
アメとムチに大胆不敵な用兵。強い駒大が帰ってきた。