由伸監督失敗はコミュニケーションの欠如と周囲の準備不足
高橋由伸は不完全燃焼だっただろう。原辰徳監督の後継者として、現役を引退。即監督に就任したのは2015年10月のことだ。
この年、打率・278、5本塁打、21打点。代打に限定すれば、同・395と勝負強さを発揮していた。現役は続行できた。やりたくて監督を引き受けたのだろうか。
選手として打撃、外野守備、走塁といった知識は誰もが認めるところだが、これが指導者だと話は別だ。監督としてチーム戦略、ゲーム戦術が必要。コーチ陣の配属を決めたり、随所で高いコミュニケーション能力が求められるが、由伸監督はこれに最も苦労していた。選手全員の能力を把握し、適材適所で起用するなんて、いきなりは酷だし、リスクも高い。課題の残る監督人事だったと感じてしまう。
ちょうど巨人の選手が手を染めた野球賭博事件に火が付き、球団が逆風の最中にいた。監督に若くてクリーンなイメージの40歳・由伸を立てることで、悪いイメージを払拭したい球団の思惑に翻弄された格好だ。
本来、オフ期間である12、1月は、監督がGM、球団代表、ヘッドコーチ、編成担当者らと「今年はこういう戦力で、こういう野球をやっていきましょう」と議論を重ねる時期だ。そんな相棒がいたのか。私は新設された三軍のコーチだったが、孤立しているように見えた。選手時代の名声に傷がついてしまったようで気の毒だった。