女性蔑視発言の“森親分”辞任で 山下泰裕JOC会長にも更迭論

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「正直、がっかりですね」

 日本オリンピック委員会(JOC)の元関係者がこんな印象を語ったのは、山下泰裕JOC会長(63)のことだ。

 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)は女性蔑視発言により12日に正式に辞任。問題発言があったのは、3日のJOC臨時評議員会でのことだった。

「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」などの発言に、会場では笑いも起きていたという。会議に出席していた山下会長が笑っていたかどうかはともかく、本来なら「その発言は大きな問題です」と、即座にいさめなければならない立場の人だ。

 国士舘大非常勤講師でスポーツライターの津田俊樹氏が言う。

「JOCの山下会長は、あらゆる差別を認めない国際オリンピック委員会(IOC)の委員でもある。森会長の差別発言をその場にいながら問題視しなかったばかりか、『五輪の根本精神に反するもので、不適切な発言だった』と正式コメントを出したのは森発言の2日後。例の逆ギレ謝罪会見で世間の批判の声が大きくなってからです。開催国の五輪委員会トップであり、IOC委員としての自覚があるのか、大いに疑問です」

 森氏の辞任を受けて山下会長は「辞任は致し方ない」と語り、川淵三郎氏(84=日本サッカー協会相談役)を「後継指名」していたことについては「正規の手続きじゃないところで次の会長が決まっていくイメージを与えたことは、よろしくない」とも言ったが、自身も無念だったに違いない。

五輪1年延期決定の電話会談には姿なし

 山下会長といえば、1984年のロス五輪柔道無差別級決勝で負傷した右足をひきずりながら一本勝ちして号泣。その姿に多くの国民は胸をうたれた。引退後、JOC理事就任は2013年。常務理事や強化本部長などを歴任。19年6月末、東京五輪招致をめぐる汚職疑惑を受けて退任した竹田恒和会長の後任に就いた。

「知名度と五輪での実績も買われたのでしょう。しかし、就任1年後の会見には落胆しました。取り組んできた課題として職員との情報共有の強化や国際的な連携強化をあげ、成績に限定されない五輪意義を発信とも言いながら、一方で『金メダル30個の目標は変えるつもりはない』とも言った。コロナで五輪が1年延期という歴史上初の有事です。メダルの数にこだわっている場合ではないでしょ。国民や動揺する選手たちに伝えることは他にあるはずです。そればかりか、山口香理事が唱えた延期論には不快感を示した。お飾りとまでは言いませんが、JOC内部の評価は高いとはいえません」(前出の元関係者)

 昨年3月24日、五輪の1年延期が決まった安倍首相(当時)とIOCバッハ会長との重要な電話会談の席には、組織委員会の森会長、小池百合子東京都知事、橋本聖子五輪相らも同席したが、山下会長の姿はなかった。これも、スポーツ界やJOC内部からは疑問の声が聞かれた。

■就任後すぐ自らの提案で理事会を非公開に

 そんな山下氏のJOC会長就任には、「スポーツ界のドン」こと、森元会長の後ろ盾があったからだともいわれている。「親分」は五輪村から追い出された。「ならば山下会長も身を引くべきです」と、前出の津田氏は手厳しい。

「辞任を決めていた森会長は、密室で川淵氏を後任に指名。不透明な選考も批判され白紙撤回された。森会長は総理経験者でもある有力政治家だった。自民党内ではこのような手法は当たり前なのかもしれないが、透明性や公平・公正性が求められる今のスポーツ界では通用しない。山下会長も就任早々、自らの提案によりJOC理事会を非公開にした。『公の場で話せない内容が多く、本音の議論ができない』というのがその理由だが、JOCが密室の中で報道陣に隠さなければならない話などあるのか。そんなことで森会長の薫陶が生きているとすれば、考えを改めるべき。この時、非公開案に反対した4人の理事(山口香氏、高橋尚子氏、小谷実可子氏、山崎浩子氏)はいずれも、『わきまえない女性』(賛成19)だったことは象徴的です。山下氏はJOC会長にふさわしくないどころか、失格です」

 まったくだ。

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