橋本vs小谷は森vs竹田の代理戦争 組織委新会長選びの醜悪
ドタバタ劇の結末はいかに。
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)が、女性蔑視発言で12日に辞任。辞める会長が川淵三郎氏(84=日本サッカー協会相談役)を後任に指名したことに菅総理(72)が「ルールに基づいて透明性の中で決められるべきだ」とダメ出しし、組織委員会の御手洗冨士夫名誉会長(85)を座長に据えた選考委員会を設置する方針が同日決まった。その直後から男女の会長候補が複数浮上。橋本聖子氏、小谷実可子氏、山口香氏、高橋尚子氏、三屋裕子氏、鈴木大地氏らの名前が連日マスコミを賑わせている。
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組織委の武藤事務総長によれば、候補者検討委員会は「理事会メンバーで、委員の数は1桁ぐらいの人数。男女ほぼ半々、アスリート中心」とし、「国や都、JOC(日本オリンピック委員会)の関係者にも入っていただく必要がある」と述べ、早ければ今週中にも新会長が決まる。
だが、検討委員会のメンバーや選考過程は非公開。世間が森前会長の「密室人事」を批判して、官邸と組織委員会は「透明性」を重視しながら、やっていることは矛盾している。
■橋本会長なら“傀儡”批判は必至
元JOC関係者は「組織委員会の会長といえば『五輪の顔』。そもそもきれいごとだけでは決まりませんよ」と言ってこう続ける。
「今や選手の強化費は税金頼み。メダルの数は税金投入額に比例するともいわれている。五輪は政治にどっぷり漬かっているわけです。政治関連でいえば、官邸が推す夏冬五輪に7度出場の橋本五輪相は細田派(清和政策研究会)の所属。つまり、森前会長の出身派閥で、彼女の政界進出を強力にバックアップしたのも森さんです。“橋本擁立”は完全な政治主導で、実現すれば森院政、傀儡の批判は避けられません」
さらに関係者は続ける。
「対して、東京都が応援団についているといわれる小谷さんは、JOCの竹田恆和会長が東京五輪招致をめぐる汚職疑惑を受けて退任する際には、涙を浮かべて名誉会長への就任を提案した。その竹田さんと森さんの不仲は有名。橋本対小谷は、森対竹田の代理戦争などと言う人もいます。竹田さんはIOC委員でもあったので、東京五輪招致委員会の理事長として世界各国を駆け回り、名前と顔が売れている。その線からIOC委員が『コタニ』の名前をポロッと出すこともあるかもしれません」
最有力候補と言われる橋本、小谷両氏の裏には、政治的な思惑が蠢いているわけだ。
山口香氏は検討委で名前も出ない?
新会長には「若い女性のオリンピアン」を推す声が多く、女子柔道の山口香氏の名前が取りざたされているのもそのためだ。山口氏には改革派の旗手として期待する声が多いのだが、こちらは委員会で検討される前に駆逐されそうだ。
JOCは昨年12月、規定を改正。今年6月の役員改選で理事の在任期間を最長で5期10年とし、女性理事の割合を40%以上を目標とすることなどを決めた。この規則により、田嶋幸三氏(63=日本サッカー協会会長)、福井烈氏(63=日本テニス協会常務理事、東京五輪選手団長)は退任する。
「2011年に就任した山口理事も対象者です。JOCの人事改定は、19年6月にスポーツ庁が出した『スポーツ団体ガバナンスコード』に基づくものですが、森さんや山下会長は、正論をズケズケと言う山口理事をケムたがっている。田嶋、福井両氏は、組織委員会の理事でもあるので東京五輪にはその後も携われる。10年任期は山口外しが目的、なんて言われていたものです」(関係者)
山口外しは単なる噂に過ぎないとしても、「この国では、正論を振りかざす女性はまだまだ嫌われるのが実情です」と人事コンサルタントの菅野宏三氏がこう語る。
「米国のバイデン大統領が、広報チームの幹部7人をすべて女性にしたということが話題になった。テニスの大坂なおみさんは女性蔑視発言の森さんを無知と言ったが、その通り。森さんに苦言を呈することができる人もいなかったのでしょう。残念なことに日本社会の現実はまだ男性優位です。いくら女性が正しいことを言っても、受け入れたくない男性は少なくない。女性は融通が利かないから企業のトップに不向きなんて言う人もいる。それまで、なあなあでやってきたことが、全部つまびらかにされて困るからです。スポーツ団体の役員に女性が少ないのも、そのような理由もあるのではないか。報道では、今回菅総理も組織委員会の新会長に女性を推しているそうですが、本音は女性差別のイメージを払拭したいだけではないか」
やっぱりこんな国で五輪をやってはいけない。