「野村ID野球」支えた選手以上に担当スコアラーが怒られた
「弱者の兵法」として野村克也監督が重視したのがID野球である。インポータント・データの略で「データ重視」の意味だ。
「敵を知り、己を知る。同じ右打者でも足が速く、塁に出したくない飯田(哲也)、長打力のある広沢(克己=現・克実)、池山(隆寛)では、相手バッテリーの心理が違う。走者の有無などの状況によっても変わってくる。相手が自分をどう考えているか、よく考えろ」
野球のカウントは12種類あり、それをバッテリーが打者を追い込んだ有利なカウント、互角の並行カウント、バッテリーが不利なカウントに3等分する。
「おまえがバッターだったら、不利なカウントならどう考える? 有利なカウントならどう考える?」
野村監督はミーティングで私を指した。答えると、「おまえと逆のことをすればいいんだ」とバッサリ。こんなことは日常茶飯事だった。正捕手の座から降ろされ、外野手に転向しろと言われた。正直なところ、釈然としない思いを抱えていたが、そんな選手は他にもゴロゴロいた。