虎快進撃も巨人まだまだ余裕 成功体験と経験値に大きな差
“春の珍事”か、はたまた実力か――。
2005年以来16年ぶりのリーグ優勝を目指す阪神が強い。チーム防御率2.21、打率.262はともに12球団トップ。18本塁打、18盗塁もリーグ1位である。走攻守で軒並みトップの成績を叩き出して7連勝中。19日現在15勝4敗で首位を快走しているのだ。
その阪神を3ゲーム差で追う2位・巨人も引き分けを挟み6連勝と状態を上げてきた。チーム防御率2.36は阪神に次ぐ12球団2位。早くも2強の様相を呈す両球団は20日から東京ドームで直接対決を行う。
巨人OBで一軍投手コーチとして4度のリーグ優勝を経験した中村稔氏がこう言う。
「巨人は主力の丸やウィーラー、若林といった状態の良かった選手を新型コロナウイルス陽性判定で欠き、苦しい中でも、投手力と原辰徳監督(62)のやりくりで、チーム状態も上向いてきた。この時期に阪神に独走されるのは避けたいでしょうが、原監督はまだ必要以上に阪神を意識してはいないと思いますよ」
■08年と13年デッドヒートの結末
成功体験がある。同じようにこの2強で進んだシーズンが13年シーズンだ。首位を走っていた巨人は4月、甲子園での阪神との初対決で、能見、スタンリッジ、榎田の先発陣に3試合30イニング連続完封(2敗1分け)に抑え込まれた。5月の東京ドーム3連戦では、新井貴の爆発などで6年ぶりとなる東京ドームで3タテを食らった。それでも夏場以降の直接対決で、ことごとく勝ち越し、一方の阪神は勝負どころの9、10月に4連敗や3連敗を繰り返すなど自滅。巨人は2位阪神に12.5ゲーム差をつけてゴールテープを切った。
08年もそうだ。巨人は7月8日の時点で首位を独走していた阪神に13ゲーム差をつけられながら、9月に12連勝。阪神との一騎打ちに持ち込むと、8月以降の直接対決は8勝2敗。最後は7戦全勝で逆転優勝を果たした。中村氏が続ける。
「原監督は戦力が揃っていない今はまだ馬なりで戦っている印象。伝統の一戦とか首位攻防戦などと力んではいないでしょう。原監督は在籍15年目で9度のリーグ優勝経験があって現在は連覇中。阪神で16年前(05年)のリーグ優勝を経験している選手は誰もいません。この差は大きい。巨人と争った08年、13年は、経験がモノをいう夏場以降にことごとく自滅していった。阪神の練習量の少なさも一因でしょうが、優勝争いは想像以上にプレッシャーがかかるものです。当たり前にできていたことができなくなる。経験として原監督はそれを知っていますから」
「やばい」と思ったことがない
昨年のリーグ優勝時のインタビューで、阪神ファンで知られる有働由美子アナに「阪神と戦って『やばい』と思ったことはありませんね」と言って笑い飛ばしていた原監督。有働アナは「悔しい~」と返したが、これは原監督の紛れもない本音である。
「2度目の復帰を果たした19年以来、原監督はリーグ3連覇中だった広島を警戒する一方で、報道陣との雑談では昨季も16勝8敗と一方的に勝ち越した阪神を話のオチに使ってイジることが多い」(マスコミ関係者)
■経験値の違いが出るのは終盤戦
前出の中村氏が言う。
「阪神のチーム失策数(12=リーグワースト2位)は今年も多い。重圧を乗り越えたリーグ優勝の経験がない選手たちが、しびれる終盤戦で金縛りに遭うことは十分考えられます。今は勢いがあっても打線は水物。現在3割(.306)をマークしているサンズらがこのまま打ち続けるとは思えません。原監督は今年の阪神の強さが本物か、見極めている最中だと思います。後半失速するであろう阪神とのデッドヒートなら、自信があるのでしょう」
巨人は阪神に昨季まで9年連続で勝ち越し。08年から13年連続で負け越していない。原監督を“本気”にさせるには、阪神が「直接対決」で巨人を倒し続けるしか方法はなさそうである。