大坂なおみの全仏OP棄権の裏で進むテニス界の「地殻変動」
今回の全仏は、第2シードの大坂なおみの会見拒否に端を発して2回戦で棄権という騒ぎに発展した。うつ病(うつ状態)と言われるが、正式な診断書は出ていないようなので、問題は試合後に義務化されている記者会見の是非だろう。ツアーの仕組みがよく理解されずに議論されているようだ。
■選手は運営者
テニスの世界ツアーを主催する男子のATP、女子のWTA組織は選手組合なのだ。WTAは、日本でキング夫人の名で知られるビリー・ジーン・キングを中心に75年に男女の賞金格差解消を訴えて結成された。現在は構造が複雑になったが考え方は同じで、選手(組合員)は出場者であり大会運営者でもある。
4大大会の賞金格差は2007年に解消され、WTAの賞金総額はむしろ男子を上回り、年間1億7900万ドル(約200億円=19年実績)。コロナ禍の中、テニス界は他競技に先駆け必死にこの膨大なマーケットを立て直そうとしている。全豪前、錦織圭や大坂なおみが15日間の軟禁生活に耐えたのは、彼らがただの賞金稼ぎではなく組合員、運営者でもあるからだ。