岩田健太郎氏「万にひとつでも東京五輪が成功すると日本の感染症対策が死ぬ」
そして、「バブル方式」というのは、内部にウイルスを入れないように徹底的に区分けするものです。だから、感染の疑いがある者をバブル内に入れてしまうのはまったく論外です。ところが、丸川珠代五輪相は今回の対応を「問題ない」との認識だった。大会主催者側が、バブル方式の意味すら理解していないとは、愚かとしか言いようがありません。
それでも東京五輪は「安心・安全」だとか。政府や都、大会組織委はその基準を示さないのも、おかしな話です。これでは何が起きても「安心・安全だった」とされるでしょう。
このような状況で東京五輪が始まろうとしていますが、私が思い描く最悪のシナリオは「大会が運良く成功してしまうこと」です。そうなった時、日本の感染症対策が死ぬと考えています。
ハッキリ申し上げると、日本の感染症対策のレベルは中国、韓国に劣っています。これは過去の間違った成功体験が原因となっています。たとえば2000年代初期にSARSがはやった時は、たまたま日本には感染者があまり入ってこなかった。次に、09年の新型インフルエンザパンデミック時は、ウイルスが弱くて何とかなってしまった。具体的な対策をほとんどしていませんでしたが、奇跡的にうまくいってしまったのです。そうして、「これでエエんや」とあぐらをかいていた結果が、現在の惨状を招いているのです。