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植月正章元アシックス営業本部長

1938(昭和13)年、鳥取県智頭町生まれ。57年オニツカ㈱入社、77年㈱アシックス推進部長、84年理事、88年取締役販売促進部長、93年常務取締役アスレチック事業本部長、99年専務取締役フットウエア営業本部長。2003年任期満了に伴い退任後、兵庫陸上競技協会会長、神戸市体育協会副会長、兵庫県体育協会副会長、神戸マラソン実行委員会会長、近畿陸上競技協会会長などを歴任。

<2>契約合意に至らなかったB.ジョンソンがソウル五輪で金メダルもどんでん返しが

公開日: 更新日:

 会社の指示に背き、スター選手との契約話は破談。社内で私への非難の声が上がったのは当然だった。

 ジョンソンは88年ソウル五輪でも世界新記録の9秒79で金メダル。ルイスに引導を渡し、新時代の到来をアピールした。アシックスはこの大会のオフィシャルサプライヤーとして韓国内での「地位」を確固たるものにしたかった。

「これは辞職するしかないか……」

 優勝を確信したジョンソンが右手を上げながらゴールするシーンを現場で見た私は、責任の取り方が頭に浮かんだものだ。

 3日ぐらいしてからか、ジョンソンはレース後のドーピング検査でステロイド系の筋肉増強剤の使用が発覚。金メダルだけでなく、後に世界陸上ローマ大会までさかのぼって記録は取り消され、ルイスが逆転優勝となった。アシックスがジョンソンと契約していたら、どれほどブランドイメージが傷ついたことか。

 契約はコストパフォーマンスを考慮しなければならないが、成績や人気だけを重視しているわけではない。カール・ルイスを逃した際は、「救世主」探しに必死になっていたことは否めないものの、本来なら、我々が求める企業イメージと選手の人間性が合致してこそ、両者は良好な関係を築ける。

 現在、野球界では大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手が日米のファンを虜にしている。彼の二刀流スパイクやバットにグラブなどはアシックス製だ。プレー以外の言動も注目されている大谷選手との契約は大ホームランである。(つづく)

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