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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

サイ・ヤング賞右腕バウアーの休職措置が示す 米国社会のDVへの厳しい対応

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 また、たとえ遠巻きに眺めるだけであっても、乱闘が始まると選手だけでなくコーチや監督もダグアウトを出て加勢する格好を示さなければいけないというのも、大リーグの不文律の一つだった。

 しかし、現在、機構と選手会は球界からの暴力の一掃を掲げており、2016年12月1日には選手が家族や交際相手、児童らに暴力を振るうことを禁止する「家庭内暴力、性的暴行及び児童虐待に関する共同方針」が施行されている。

 こうした状況の下では、被害に遭ったとされる女性との間で係争中のバウアーは規定違反となり、ドジャースにもバウアーを擁護する余地はないのである。

 7月末にはナショナルズのスターリン・カストロが共同方針に違反したとして30試合の出場停止となり、球団側は処分明けの解雇を表明している。

 何より、男性による女性への暴力や不倫が著名人の失権や政治家の失脚につながるのは、ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモの辞任表明でも明らかだ。

 新型コロナウイルス感染症の拡大が急速に進んだ昨年、連日のように記者会見を行って記者団の質問に的確に答えるクオモは米国だけでなく世界中から注目され、一時は「民主党の大統領候補」とまで言われた。それでも、性的嫌がらせの疑惑が最後の一押しとなり、知事の座を去らざるを得なくなったのである。

 米国社会における家庭内暴力や性的嫌がらせへの対応の厳しさを考えれば、バウアーの休職は当然の措置であるし、制限解除後の処遇も予断を許さないのである。

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