アーチェリー男子個人・団体「銅」古川高晴<3>12年ロンドン五輪銀の失敗を生かした準決勝敗退の瞬間
古川高晴(37歳、アーチェリー男子個人・団体、銅メダル/近大職員)
ランキングラウンドを64人中46位で終え、絶望と悔しさで夜を明かして迎えた7月24日の朝。
古川を救ったのは妻の一言だった。
「電話で『あんまり眠れなかった』と伝えたら、『私も眠れなかったよ』と言ったのです。この言葉を聞いて、もう、なんと表現したらいいか……僕だけが苦しい思いをしていたわけじゃない、一緒に戦ってくれていたんだなと痛感しました。妻のおかげで雑念が吹き飛び、狂ったフォームの修正だけに集中することができました」
練習場に足を運ぶと所属先である近畿大学のキム・チョンテ・コーチにオンラインで指導を仰いだ。1時間矢を射るとそれを動画に撮り、キムコーチに送信。アドバイスを受けるとまた1時間後に新たな動画を送る。これを繰り返してフォームの修正を重ねた。その最中に行われたミックス種目に武藤弘樹(24)&山内梓(22)組が出場する時間は、しっかり応援に駆け付けた。
「通常ならば大会期間中はどんなに多くても250本ほどしか射ちませんが、そんなことは言ってられない。他の代表メンバーが帰っても時間の許す限り練習場に残り、普段の練習のように500本は射ち込みました。翌日も朝から夕方までみっちり練習して、なんとか立て直せたのです」