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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

大谷翔平の“勝ちたい”発言が「積極的な提言」と受け止められる背景

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 ところで、大リーグではしばしば、選手が球団や機構に不満の声を上げる。

 最近でもブライス・ハーパー(フィリーズ)が「大谷が投げ、トラウトが打つ場面を想像するだけで心が躍る」と、五輪への選手の派遣を行わない機構を批判している。また、今年6月にはピート・アロンソ(メッツ)は投手による滑り止め粘着物質の使用禁止措置について、FA選手の大型契約を阻止するのが目的だと機構と球団を非難している。

 日本の場合、「フロント批判」や「監督批判」には厳しい視線が送られやすい。事情は大リーグも同じで、球団の顔として親しまれたサミー・ソーサがカブスからオリオールズに移籍したのも、監督の批判を繰り返し行ったことが最大の原因であった。

 ただ、同じように批判を行っても問題視されない選手もいる。言動の謙虚な選手などはその典型で、そうした選手の批判はむしろ好意的に捉えられることも珍しくない。今回の大谷の場合も、投打にわたる活躍は明らかだし、球場の内外での配慮のある行動も、しばしばテレビやSNSで取り上げられ、好感を持たれている。

 そのため、大谷の発言も、球団批判というよりは、チームの再建に向けた積極的な提言として受け止められている。その意味で大谷は今季、大リーグ屈指の好選手となっただけでなく、試合後の発言とその影響の面でも、大リーグの環境に適応したと言えるのだ。

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