新庄さんがボソッと呟いた「コジ、白い車は白く乗れよ」から学んだこと
当時のジャイアンツは毎年のように地区優勝争いを繰り広げており、西海岸のドジャースと人気を二分していた。試合後は選手の出入り口に地元ファンによる人垣ができていた。
ホコリで汚れた車でファンの前を通り過ぎようとしたその時、助手席の新庄さんは笑顔でファンに手を振りながら、ボソッとこんなことを呟いた。
「コジ、白い車は白く乗れよ」
高給取りのメジャーリーガーが、汚い車に乗っていればイメージダウンは明らかだ。将来、メジャーリーガーを目指す子供たちの夢を壊すことにもなりかねない。新庄さんには「プロである以上、いつ何時も誰かに見られていることを意識しなさい」と教えられた。
NYメッツに復帰した03年は、夏場に3Aノーフォーク・タイズに降格した。マイナー落ちした当初は大量の日本のメディアが取材に来ていたが、時間の経過とともにクシの歯が欠けるように人数は減っていき、1カ月も経つと地元紙の記者しかいなくなった。
新庄さんが「プロになって初めてだわ、こんなにメディアに見られないで野球をするのは」と話していたのを覚えている。それでも自らを律し続け、見られているという意識が変わることはなかった。