労使対立の激化は米球界の終わりの始まり 動画配信の一般化で視聴者は奪い合いの状況
何より、90年代後半はインターネットの普及と拡大の時期であり、球界にとっては他のスポーツのみが競争相手といってよかった。
だが、2021年のワールドシリーズの平均視聴率(6.5%)と平均視聴者数(1174万人)はいずれも過去2番目に低く、6試合の合計視聴者数も約7045万人だった。
■動画配信サービスやオンラインゲームの一般化
今年2月のスーパーボウルの視聴率(36.9%)と視聴者数(9918万人)はワールドシリーズをしのぐとはいえ、近年は数値が伸び悩んでいる。
「米国最大のスポーツイベント」とされるスーパーボウルでさえ動画配信サービスやオンラインゲームなどの一般化を受け、視聴者の奪い合いを余儀なくされている。こうした状況を見れば、大リーグを取り巻く環境は、今後厳しさを増すことはあっても、劇的な改善を期待することは難しい。
それにもかかわらず、労使双方が譲歩と妥協を拒み、たとえ名目のみであっても中立的な立場を求められるコミッショナーが球団経営陣と一体化してMLBPAと対立し、結果として最大の「商品」である試合を予定通り行えないのが、現在の大リーグの状況である。
人々の趣味が多様化し、しかも「コロナ禍」以降に米国社会の動揺が加速する中で、関係者が徹底した対立を止めないならどうなるか。球界そのものの将来は暗澹たるものとならざるを得ないのである。