<22>高木菜那所属・サンキョー廃部の衝撃 メダルラッシュが企業スポーツを追い込む皮肉
サンキョーの廃部で、有力な実業団は、私の所属していた富士急行が「最後の砦」。北京五輪で5000メートルに出場していた高校生の堀川桃香選手はサンキョーの内定が取り消しになり、その後、富士急の入社が決まった。が、今後もNTが同じ強化方針を続けるとしたら、富士急もどうなるか分からない。1984年から11大会連続で五輪選手を輩出しているが、代表選手を出せなくなれば、廃部に追い込まれるかもしれない。そんな危機感を持ちながら成績アップに全力を尽くした。
■1人年間500万円
NTの弊害は残された選手にも及ぶ。NTに入れず各企業に残った選手は練習相手不在での調整を強いられることも少なくない。スピードスケート、特に長距離は練習相手が非常に大事。長い距離を滑り込んでスピード滑走など技術を磨く。かといって、部員を増やせば増やすほど経費はかさむ。運営費は1人につき年間約400万~500万円はかかる。サンキョーの場合、部員は8人なので、それだけで4000万円前後はかかる計算。五輪に出場すれば企業の宣伝にはなるが、メダルを取ったとしてもそれだけで選手にかかる経費をカバーできるかといったら、正直難しい。