10.19ダブルヘッダー第1試合 絶体絶命のピンチで打席に入った梨田昌孝さんとの思い出
ロッテとのダブルヘッダー第1試合は八回、代打・村上隆行の2点適時打で3-3の同点に追い付いた。
とはいえ、この年のパ・リーグの規定でダブルヘッダーの1試合目に延長はない。我々、近鉄に残されたイニングはあと「1」。このまま同点なら、その時点で優勝がなくなってしまう。後がないベンチは八回裏からこの年、10勝2敗24セーブの守護神・吉井理人をマウンドに送った。
吉井は1死後、マドロックに左前打を許したものの、この回を無失点に抑えて九回を迎えた。
泣いても笑っても、試合はこの回限り。絶対に勝ち越さなければならない近鉄は1死後、淡口憲治さんが右中間二塁打。決勝の走者が出た場面で、俊足の佐藤純一さんを代走に送った。次打者の鈴木貴久さんは、代わったばかりの抑え・牛島和彦さんから右前打を放った。
そのとき私は三塁側ブルペンの中にいた。
「逆転だ!」
フェンス一枚を隔てて近鉄ファンの叫び声を背中に浴びる。自分もそう思った。球場全体から沸き上がる地鳴りのような歓声はしかし、一瞬にして、