大谷が完全復調、エンゼルス首位快走も…悲願のポストシーズンへ「3つの時限爆弾」
エンゼルス・大谷翔平(27)がチームとともに調子を上げてきた。
日本時間10日のレイズ戦は主砲トラウトとのアベックアーチに、キャリア初のグランドスラム。今季2度目の1試合2発で6本塁打とし、メジャー通算100本塁打に王手をかけた。
チームは東地区首位のヤンキースとともにア・リーグ最速で20勝(11敗)に到達。2位アストロズと1ゲーム差で西地区首位をキープした。
好調なチーム状態について大谷は「(自身は)打撃で結果が出てないとか、いろいろありますけど、勝つに越したことはないです。チームが勝てば気持ちいいものだと思うので、今の(状態)がずっと続くように頑張りたい」と話した。
大谷は昨季終盤の会見で「ヒリヒリする9月を過ごしたい」と、個人の成績以上に勝利、チームのポストシーズン進出を熱望した。投打の歯車がかみ合い、開幕ダッシュに成功した今季は2014年以来8年ぶりのプレーオフ進出のチャンスだが、エ軍がこのまま順調に白星を積み重ねる保証はどこにもない。故障リスクの高い選手が少なくないからだ。
■負担増の大谷には股関節痛、主力にも故障明けズラリ
投打でチームを牽引する大谷は股関節の痛みを訴えて2日のホワイトソックス戦で途中交代。翌3日はスタメンを外れた。不安を抱えている上、今年からのルール変更でリアル二刀流の負担が増した。
大谷とともにローテの軸を担うメッツから移籍のシンダーガードは右肘の手術明け。昨季、トラウトは右ふくらはぎ痛、レンドンは股関節痛を患うなど、投打の主力がこぞって故障を抱えているだけに首脳陣は起用に細心の注意を払っている。
「投手、野手とも実力のある選手が揃ってはいるものの、不安は尽きません」と大リーグに詳しいスポーツライターの友成那智氏がこう続ける。
「先発陣はシンダーガードの他、レッズから移籍のロレンゼンは昨季、右肩を痛めて2カ月以上、戦列を離れた上に、先発を務めるのは今季が実質1年目。左腕のサンドバルは昨年8月に腰を手術して何とか開幕に間に合わせた。故障リスクの高い3人がローテを担っているだけに先行きは決して明るいとは言えません。疲労がピークに達する夏場には先発陣に故障者が出ても不思議ではない」
夏場までに地区優勝、ポストシーズンに手が届く位置につけていれば当然、7月末のトレード期限を前に補強に動くとみられる。人件費削減を検討しているとされるアーティ・モレノ・オーナーもさすがに金庫を開けて戦力の上積みを図るはずだが、それでもエ軍の不安は拭えない。ジョー・マドン監督(68)の契約問題があるからだ。
マドン監督の契約問題も
米スポーツサイト「ジ・アスレチック」によれば、今季で3年契約が切れるマドン監督はワールドシリーズ進出を果たした場合、自動的に来季の契約が更新されるという。来季の年俸は約5億2000万円で、現役の監督では最高額になる。
マドン監督は昨季から「まだ体が動くうちは、チームの指揮を執っていたい」などと話し、来季以降の続投に前向きな姿勢を見せている。これまで指揮を執ったレイズ(08年)、カブス(16年)の2球団をワールドシリーズに導いているだけに、今季の後半戦で目の色を変えてくるのは必至だ。
「マドン監督はレイズ、カブスで指揮を執った際、特定の選手に固執していた。特にリリーフ陣にその傾向が強く、酷使につながっていた。今季はここまでは先発陣が安定しているだけに、その傾向は見られないが、地区優勝争いが熾烈になる8~9月は守護神イグレシアスら計算できるリリーフ陣をフル稼働させるはずです。リリーフ陣が無事に終盤を乗り切れれば、勝機はありますが、酷使がたたって調子を崩したり、故障者が出れば失速につながりかねません」(友成氏)
大リーグ公式サイトは7日、開幕1カ月のポストシーズン進出予想オッズを掲載。開幕前の下馬評と比較してプレーオフ進出の可能性が最も高まった球団にエンゼルスを挙げている。開幕前、エ軍の進出確率は44.7%だったが、開幕ダッシュを受けて67.2%に上方修正した。米国の野球アナリストの多くは当初、エ軍の戦力を信用していなかったことになる。
大谷が自身初のプレーオフを経験するのは容易ではない──。