東京五輪施設は赤字まみれ「負のレガシー」のまま…イベントだけで回収じゃ“焼け石に水”
「活用が今のような程度では、間違いなく赤字の状態は続くでしょう。体験ツアーも意味がないとは言わないが規模が小さく、本来の競技と連動性がないものも多い。そもそも造る段階で運営経費が赤字になることは分かっていたのに、五輪の後をまったく考えていないことが問題だと思います。私は東京五輪前から橋本聖子組織委員会会長(当時)に『スポーツの財源をどう生み出していくかを真剣に考えるべきだ』と伝えてきたんですが、動いているフシがまったくない。JOCやスポーツ庁も『所有しているのは国や都だから自分は関係ない』とまるで他人事のようです」
ボート会場となった海の森水上競技場は当時、巨額な維持費や五輪後の活用問題が浮上し、一時建設がストップ。五輪会場の中で「最大の負の遺産」とまでいわれた。10月にメモリアルレガッタの開催が予定されているが、年30大会の実施目標が実際は10程度にとどまる可能性もあり、赤字は想定の同1.6億円を上回る見込み。“もと”は取れそうにない。
「真剣にスポーツを中心として物事を考える人材育成ができていないのも問題です。大学では『スポーツマネジメント学部』のようなものも増えてきましたが、その教壇に立つのが高橋治之元理事のような仕事をしていた人間。スポーツを食い物にして金儲けすることは上手になっても、本当のスポーツ発展につながることは学べない。スポーツ哲学として根本的な部分が欠落していくだけです」(小林信也氏)
さまざまな部分で「負のレガシー」という借金地獄からは抜け出せそうもない。