九州場所の思い出…倉庫で地元の土を2カ月間寝かせて土俵を作った
宿や会場の交渉に始まり、土俵作りなど、たった1日の巡業でもやることは多い。だからこそ、体力のある若手親方がその役目を任されるのだと思います。
■本場所の俵は…
土俵の土といえば、思い出すのが11月の九州場所です。私は九州場所担当を9年間務めていました。土俵を作る土は、何でもいいというわけではありません。今は年6場所、同じ土を使っているそうですが、当時は九州場所の土俵は地元の土を使っていました。それも、ただ掘ってきて土俵の形にすればいいというものではありません。
まず、風通しの良いプレハブ小屋を建て、そこへ調達した土を運び込みます。そこで寝かせること2カ月間、ほどよく乾いたちょうど良い土が出来上がるのです。
とはいえ、土俵はどんなに頑張って作っても壊れるものです。力士が投げられた衝撃でヒビが入ったり、欠けたり。そのたびに結びの一番が終わってお客さんが帰った後、呼び出しさんが修理をします。
ちなみに本場所が終わって解体した後に残った俵を、「欲しいからください」と持って帰るお客さんもいました。中には床の間に飾っている人もいるそうです。 (つづく)