藤浪晋太郎の新天地はアスレチックス メジャー屈指の再生工場で待ち受ける苛烈な生存競争
先発ローテ入りはキャンプ、オープン戦の内容次第
昨季のアスレチックスは先発、リリーフとも駒不足が響いてチーム防御率4.52はリーグ13位。投手陣が崩壊したこともあり、地区最下位に沈んだ。
移籍情報サイト「トレード・ルーモア」によれば、今季のローテーションは左腕アービン(28=昨季9勝13敗)、右腕ブラックバーン(29=同7勝6敗)のエース格2人が確定。今季のア軍は開幕当初、先発6人制を採用する可能性もあり、3番手以降は藤浪や韓国球界NCダイノスから移籍のルチンスキーら、メジャー実績のない投手で争うと予想している。
現状、2人のエース格以外の先発投手は横一線とみられ、藤浪がローテ入りするチャンスは十分にある。
チームの方向性もフィットしそうだ。ア軍は全米でベストセラーとなった「マネー・ボール」で知られるビリー・ビーンGM(現オーナー付シニアアドバイザー)のもと、長らく低予算で球団を運営。独自の統計的手法を用いて他球団が見向きもしないアマ選手をドラフトで指名したり、実績がありながら故障や不振で結果を残せなかった選手を獲得して金満球団に対抗してきた。
00年からの7年間で4度の地区優勝。近年も20年に地区優勝を果たすなど、昨季までの5年間で3度、プレーオフに進出している。
ア軍では、過去の実績がありながら、くすぶり続ける選手が復活するケースが少なくない。07年奪三振王の左腕スコット・カズミア(当時レイズ)は故障もあって一時は独立リーグでプレーしていたが、14年にアスレチックス入りすると、07年以来7年ぶりに規定投球回に到達。自己最多の15勝(9敗)をマークし、カムバック賞の最終候補に入った。
その点で藤浪は、プロ1年目の13年から3年連続で2ケタ勝利を挙げたものの、16年以降の7年間は2ケタ勝利が一度もなく、計22勝にとどまっている。アスレチックスで輝きを取り戻すことができれば、同一リーグに所属する投手大谷との投げ合いや、打者大谷との対決が注目を集めるのは間違いない。
■球団の編成トップは見切り早く…
しかし、それはあくまでも順調なスタートを切れればの話だ。「先発として成功できるかどうかは、キャンプ、オープン戦の内容次第でしょう」とは、大リーグに詳しいスポーツライターの友成那智氏。
「実戦形式の打撃練習での登板やオープン戦で制球難が露呈するようなら、いくら先発陣に不安を抱えるアスレチックスでも、藤浪をローテで起用することは考えづらい。球団の編成トップであるビーン氏は、意外にも選手の見切りが早いことで知られる。12年オフに2年約5.5億円で契約した中島宏之(西武から移籍)をオープン戦で実力不足と判断、マイナー降格させると、その後は一度もメジャー昇格させなかった。05年に阪神から移籍した藪にしても先発の一角を期待しながらオープン戦での投球を見て、開幕後は中継ぎで起用し続けた。藤浪も同様にビーン氏のお眼鏡にかなわなければ開幕前に先発を剥奪され、中継ぎへ降格させられるかもしれません」
阪神では辛酸をなめ続けた藤浪。かつてない苛烈なサバイバルを勝ち抜くことができるか。