担当したルーキーや若手の面倒を見るだけがスカウトの仕事じゃない
キャンプ地もまだ肌寒いとはいえ、日中、スタンドで太陽を浴びていれば、どうしたって気持ち良くもなる。
大きな声じゃ言えないけれど、前夜は地元の焼き鳥屋の大将と痛飲、次の休日にゴルフをやる約束をしたんだっけ。「あのオヤジは結構、うまいからなぁ」なんてグリーン上に思いを馳せてたら、つい、コックリ、コックリ。居眠りをしてたら部長の声で起こされた。
「いや、ベテランともなると余裕だね。グラウンドも見ずに……」って、いきなり嫌みだよ。
聞けば次の休日、他球団の練習試合を見に行くという。
「あそこの球団のルーキーはおまえも高く評価してたじゃねーか。オレもいいと思ってた投手だ。試合で投げるかどうかは分からないが、ブルペンぐらいは見てオレたちの見立て通りなのか確かめたくてな。ウチのキャンプは休みだし、おまえも一緒に見にいかねーか?」
えーっと……次の休日はちょっと予定が……って、ここまで出かかったときに部長がたたみ込んできた。