担当したルーキーや若手の面倒を見るだけがスカウトの仕事じゃない
「そういや、別の連中は地元の高校を見に行くって言ってたな。なんでもドラフト候補の右腕がいて、場合によっては上位指名もありそうだから、こっちにいるうちに見ておくってさ。なにも自分が担当したルーキーや若手選手の様子を見たり、相談に乗ったりするだけが、オレたちスカウトの仕事じゃねーからな。こっちにはわずかな期間しかいないんだし、時間は有効に使わないとな」
■主力の動きを見ておくべき
そういえば部長には以前、言われたことがある。スカウトはアマチュアの試合ばかり追い掛けてるせいか、選手を見る基準が多少、甘くなるきらいがあると。なのでキャンプで主力選手の動きやグラブさばき、エース級の球のキレなんかを目に焼き付けておくべきだってね。
オレが担当した高卒2年目の野手は順調に成長してる。二軍の首脳陣に聞いたら、シーズン半ばにはウエ(一軍)に推薦するつもりだって言ってたし、本人と話して今年にかける気持ちが強いことも分かった。すっかり気を良くして「おい、同期の〇〇にだけは負けるんじゃねーぞ」なんてハッパかけてすっかり仕事が終わった気になっていたけど、部長の誘いを断ってゴルフになんか行って、後でバレたら何を言われるかわかったもんじゃない。
「次の休日ですね? もちろん、一緒に行かせてください!」
笑顔でこう言いながら、部屋のゴルフバッグはそのまま送り返すことになると思ったね(涙)。