春日良一
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春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。

2030年冬季五輪に突然、スウェーデンとスイスが開催名乗りを上げた裏側

公開日: 更新日:

 6月29日、山下泰裕氏が日本オリンピック委員会(JOC)会長に再任された。3期目となる。2019年、山下氏がJOC会長に初めて就任した時、私は大いなる期待を持った。それは彼が「嘉納治五郎先生の志を継ぐものでありたい」と語ったからだ。

 嘉納治五郎が1911(明治44)年、大日本体育協会を設立したのは、オリンピックに参加するためだった。参加するには、その国のスポーツを統括する団体として国内オリンピック委員会が必要だった。柔道の創始者として「精力善用、自他共栄」を唱える嘉納はアジア初の国際オリンピック委員会(IOC)委員として、時のIOC会長クーベルタンの「スポーツによる世界平和構築」の理想に共鳴していたのだ。

 山下JOCは前途洋々に思えた。モスクワボイコットの悲劇を克服し、ロス五輪で負傷しながら金メダルを獲得した柔道家が、嘉納の精神を受け継ぎ、JOCを指揮していくのである。

 ところが、20年初めにコロナが世界を襲い、東京五輪2020が翌年に延期となり、世論が開催批判に傾く中、山下会長から五輪の理念、開催の意義を訴える声は聞こえてこなかった。嘉納であれば「平和の祭典」の意義を熱弁しただろう。

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