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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

混沌とする米国の大型ストライキの行方…“世界最強”MLB選手会の交渉力を左右しかねない

公開日: 更新日:

■労働組合の存在感や交渉力そのものが弱体化

 米国の娯楽産業だけでなく世界のエンターテインメント産業の中心ともいうべきハリウッドでのストライキも、「全米最強」ともいわれるUAWの事例でも組合側が劣勢に立たされていることは、一時は「世界最強」と称された大リーグの選手会にとって見過ごすことのできない事態だ。

 なぜなら米国の産業界全体での組織率の低下もあって、労働組合の存在感や交渉力そのものが弱まっているからだ。

 実際、コロナ禍の中でシーズンの開幕の時期や試合数、さらに選手の年俸の支払額のあり方などを巡って労使が対立した20年の事例でも、労使協定の改定を巡り経営者側による施設封鎖に発展した21年12月から22年3月にかけての交渉でも、双方が早期の収拾を図る姿勢を容易に示さなかった。

 球団経営のほかに収入源がある経営者たちにとって、球界を離れても知名度を生かすことはできる選手はごく一部で、最終的に試合に残るために妥協の道を選ばざるを得ない者が大多数という現状は、くみしやすいものである。

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