「強くなりたいのか」と殴られた…元横綱・柏戸が受けた理不尽と伊勢ケ浜部屋の対極
九州場所は霧島の優勝で幕を閉じたが、熱海富士が2場所続けて千秋楽まで優勝争いに残った。初めて上位陣とひと通り当たる来場所次第では、次の大関候補にも名乗りを上げそうだ。
伊勢ケ浜部屋にはほかに西前頭5枚目で9勝した翠富士ら5人の幕内力士がいて、幕下では入門6場所目の聖富士が優勝し、尊富士も新十両昇進を決めた。親方衆は「あの部屋の力士はみんな体がパンパンに張っている」「稽古の自信を持って取っている」と口をそろえる。
ふた昔前の相撲部屋ほど朝は早くない。師匠の元横綱旭富士は密度を重視し、「量」だけ強調されるのは理論派として不本意だろうが、ともあれ結果は雄弁だ。
元横綱柏戸の鏡山親方から生前、若い頃の話を聞いた。稽古休みの日に、四股だけでもと土俵へ降りていたら、げんこつが飛んできたという。
「麻雀をしていた兄弟子に、『おまえ、強くなりたいのか』って殴られたんだよ」
幸い柏戸は出世が早かった。部屋頭になれば存分に稽古ができる。好敵手・大鵬との出会いもあった。そうでなかったら古株たちに取り込まれたかもしれない。