「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」レイチェル・ジョイス著、亀井よし子訳

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■ブッカー賞候補の話題作

 ハロルド・フライ、65歳。定年退職して妻と2人暮らしのイギリス人。予想外のことはけっしてしない、平凡で平穏な男……のはずだった。だが、あるとき昔の同僚だった女性から手紙が来る。がんでホスピスにいるという。それを読んだとたん男の心に何かが起こる。お見舞いを書いた短い手紙をポストに入れに行った彼は、やがてそのまま、1000キロ離れたホスピスまで歩き始めたのだ。

 まるでファンタジーばりの設定だが、何げない細部から、ひとりの男の人生がじわじわと浮かび上がる。著者は4人の子供を持つ母にしてラジオの台本作家。これが初めての小説で、いきなりブッカー賞候補にまでなったという話題作だ。
(講談社 1900円)

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