人気シリーズの最新作を上梓した大沢在昌氏に聞く
かつては、カタギが暴力団と関われば骨までしゃぶられるのが常だった。しかし今では、カタギと組まなければ暴力団のシノギは成り立たなくなっている。暴力団よりタチの悪いカタギが、暴力団より優位に立つという奇妙な逆転現象が起きているのだ。
「とはいえ、暴力団が消えてなくなったわけではありません。司法の圧力に耐えた暴力団が“少数精鋭”となって強固な組織力を持ち、一般企業よりも巨額の資金を動かし始めている。組織犯罪処罰法や暴力団排除条例は、善と悪の境界線をどんどん曖昧にしていくでしょうね」
捜査1課の谷神とコンビを組んで捜査を進めていく佐江は、やがて日本最大の広域暴力団である高河連合の最高幹部、延井が仕掛けた「Kプロジェクト」に行き当たる。延井は、何年もかけて歌舞伎町のオレンヂタウンの地上げを行い、ある目的のために「Kプロジェクト」を強硬に進めていた。そしてこれを邪魔する者は、連合が雇ったプロの殺し屋によって次々と排除されていたのだ。
「目に見える雑草だけを刈り取り、土の中深くに潜り込んだ根っこは見て見ぬふりをするかのような暴力団がらみの現状に、警察内部でも不穏な動きが出てくる。これに対し、佐江はどう向き合うのか。実は今作をもって、狩人シリーズは完結を試みています。佐江のことも、彼の死を視野に入れながら書き進めました。見てくれは冴えない不器用な男ですが、反骨精神の塊で絶対に敵にはしたくない。友達だったら非常に面倒くさそうなヤツですが、私自身も彼に愛着がありましたから、どのような結末を迎えるのか楽しみに読んでいただければ幸いです」