極上のミステリー特集
09年11月、若橋は2年がかりの交渉の末にある事件の関係者である七緒へのインタビューに成功する。ある事件とは、7年前、有名女優を妻に持つ社会派ドキュメンタリー作家の熊切が、秘書で愛人だった七緒と心中を図り、熊切だけが死んでしまったというものだった。取材を進める若橋は、次第に熊切の死が心中ではなく、何者かによる殺害ではなかったかと疑念を抱き始める。
著者は、カルトテレビ番組「放送禁止」の原作者・演出家。面白くないわけがない。
(新潮社 1800円)
■「テミスの求刑」大門剛明著
三重県津地検で検察事務官として働く星利菜は、残業中、上司の田島検事を「人殺し」呼ばわりする脅迫電話を受ける。
電話の主は、3年前に交番勤務の警官だった星利菜の父親を殺害して刑に服する沢登の父親のようだった。沢登を起訴した田島は、被疑者から自白を引き出す技術で警察・検察関係者から一目置かれる存在だった。
しかし、沢登が刑務所内で自殺したと聞いた星利菜の心の中にある疑問が生まれる。