「禁忌-taboo-」浜田文人氏
さらに、これまで著者が築き上げてきた作品のテイストをすべてリセットして描いたという点も、作家としてタブーへの挑戦だったという。文体をこれまでとは全く変え、“描写し過ぎない”ことを心がけながら筆を進めたそうだ。
「近頃の小説界に対して強い危機感があったためです。描写し過ぎ、説明し過ぎで、ある意味分かりやすい作品が増えた。しかし一方で、行間を読んだり余韻を感じさせるという、小説の持つ魅力が消滅しつつあると思う。だから、まずは自分の作品から小説本来の姿に立ち返ろうと考えました」
著者の人気シリーズである「公安捜査」や「捌き屋」とは雰囲気が大きく異なる本作。しかし、研ぎ澄まされた筆致の中には、現代社会が抱える闇や登場人物たちの怒りと悲しみが鮮明に浮かび上がってくる。
著者渾身の正統派ハードボイルド作品だ。(幻冬舎 1600円+税)
▽はまだ・ふみひと 1949年、高知県生まれ。関西大学法学部卒業。フリーの記者として新聞、週刊誌等に寄稿。 2000年に「公安捜査」で作家デビュー。同シリーズの他、「捌き屋」シリーズ、「若頭補佐 白岩光義」シリーズなど著書多数。