「作家の珈琲」コロナ・ブックス編集部著
中国の悲恋物語を図案化した「ブルーウィロー」を愛し、自らもコレクションしていたという。
俳優仲間の池部良に「とにかく、徹夜でコーヒーばっか飲んでる」と著書で暴露された高倉健は、その言葉通り、京都撮影所時代に毎夜、撮影が終わると大部屋俳優だった小林稔侍らを連れて、行きつけの烏丸紫明の喫茶店「花の木」を閉店後に訪ね、夜中の3時ごろまで過ごしていたという。同店の壁には今も、健さんから贈られたジャン・ギャバンのパネルが飾られている。
その他、落語家の古今亭志ん朝が通った新宿のジャズ喫茶「DIG」、晩年、パリ郊外の農家を改造してアトリエにしていた画家の藤田嗣治のコーヒーを通じた隣人との交流、そして「活字にしたどれひとつとして、喫茶店以外で書いたものはない」と喫茶店を仕事場代わりにして執筆した中上健次など25人が登場する。
表紙のコーヒーカップを手に珍しく笑顔を見せる松本清張の写真は、担当編集者がカメラマンのカメラを借りていたずらで撮影したものだという。コーヒーは作家たちに、ひとときの安らぎと、時に創作の啓示をもたらした。