「ルポ 過労社会」中澤誠氏
「要は勝つため、目先の利益を上げるためです。高度経済成長時代、家庭を顧みない企業戦士という男の美学に加えて、バブル崩壊の厳しい経済状況で、派遣労働などで人をモノ扱いするようになりました。リーマン・ショック後、経営側はさらなる規制緩和を求めています。今やろうとしている裁量労働制は、いくら働いても残業代ゼロ、長時間労働が悪化すると指摘されています」
過労死のケース紹介、企業や労働基準監督署への取材を通して、いま必要なのは、総労働時間の規制、翌日の仕事まで一定の時間を空けるインターバル休息制度ではないかと本書は問いかける。
「利益追求は企業の大前提だとしても、働く人の健康や命まで失わせていいのか。長期的に人を育てる戦略がないのは、経営者としての甘えではないでしょうか。昔、炭坑に入るときのカナリアのように、過労死で亡くなった方たちは、この職場はみんな疲弊してるよとSOSを発しているのだと思います。経営者は、その警鐘を受け止め、お題目としてのワーク・ライフ・バランスではなく、従来の働き方に決別する経営戦略を立ててほしいです」(筑摩書房 820円+税)