「人生最後のご馳走」青山ゆみこ著
大阪の「淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院」では、毎週土曜日、患者さんが夕食に好きなメニューをリクエストできる「リクエスト食」と呼ばれる取り組みが行われている。
末期のがんで余命が2~3カ月と宣告された患者が入院の対象で、成人病棟の平均在院日数は約3週間。同病院へ転院してきた患者たちは、手厚いケアによって心と体の痛みが緩和され、それまでの抗がん剤治療などによって失っていた食事への意欲を取り戻す。
本書は、人生の最終章を迎えた患者たちの選んだメニューから、その人の生きてきた人生の風景を描き出すビジュアル・ノンフィクション。
転院して笑顔を取り戻した玉井和代さん(74歳、すい臓がん)は、天ぷらをリクエスト。3人の子どもの育児が落ち着いたころ、スーパーのレジでパートを始め定年まで続けた。いつも時間に追われていたため、自然と料理の手際がよくなり、子どもたちが育ち盛りのころは天ぷらを山のように揚げたという。揚げても揚げてもお皿から消えていく感じで、揚げているうちに自分はお腹いっぱいになってしまったと。