「心の平安」アフメト・ムディ・タンプナル著 和久井路子訳
両親をなくしたミュムタズは従兄のイヒサンに引き取られる。ミュムタズはボードレールやオペラ「魔笛」など西洋の文化に引かれていたが、包括的なトルコ史を書こうとしていたイヒサンの講義を受けてトルコの文化に目を向けるようになった。博士論文を書き上げたミュムタズはボスポラス海峡を渡るフェリーの中で、ヌーランと出会う。彼女は夫と別れたばかりだった。2人はイスタンブールで再会して、離宮を見に行ってその美しさに打たれる。そして愛をはぐくんでゆくのだが……。
第2次大戦勃発前のトルコの青年の甘美な愛と、祖国の文化への郷愁を描く長編小説。(藤原書店 3600円+税)