「国立がんセンターでなぜガンは治らない?」前田洋平著
多くの人が日本のがん治療の最高峰と考える国立がんセンター。しかし本当の姿は、国からの補助金漬けのずさんな経営体質や、“がん難民製造工場”と揶揄される不適切な診療体制などの問題が山積みで、2010年までには668億円という巨額の赤字を抱えていた。
このような状況を変えるため、地方の国立大医学部の医師であった嘉山孝正氏が理事長となり、大胆な改革を実行。組織や人事、そして業者との関係も見直し、1年で黒字を達成するという成果を挙げていた。ところが、嘉山氏は理事長の2期目に再任されることはなかった。改革をつぶしたのは、既得権を守ろうとする厚労省と、安倍政権の思惑だった……。
日本の医療が抱える闇を、白日の下にさらすルポだ。(文藝春秋 740円+税)