マガモのペニスはらせんを描いてメスを襲う!?
ジュールズ・ハワード著、中山宥訳「生きものたちの秘められた性生活」(KADOKAWA 1900円+税)では、動物学を専門とする科学エッセイストが、自然界の神秘や進化といった大真面目な視点から、生きものたちのセックスライフの不思議を解き明かしていく。
本書執筆のきっかけは、エディンバラ動物園でのパンダの繁殖に関する報道だったという。スコットランドでもパンダ繁殖の取り組みが盛んだが、なかなか成功には至らず、“パンダはセックス下手で絶滅しても仕方がない”“維持管理に金がかかり過ぎる”などの批判が噴出しているという。しかし、パンダの繁殖能力は弱いどころではなく、オスの精子数は他のクマ類の20倍以上という濃さ。むしろワイルドなセックスをする繁殖能力にたけた生きものであり、人間さえちょっかいを出さなければ万事健やかな子孫繁栄が望めるそうだ。
生きものたちのセックスは実にユニークで、体が理にかなった進化を遂げている例も多い。著者が感嘆に値するセックスと評するのが、奄美諸島の固有種であるオットンガエルのそれだ。オスは進化の過程で指を1本多く獲得しており、先端には哺乳類の爪に似たトゲが生えている。セックス前のメスを巡る戦いの際に、相手のオスを突き刺す武器として用いるためだ。これほど野性的にセックスに挑む生きものはそういない。