「ANTIFA ヘイトスピーチとの闘い 路上の記録 秋山理央写真集」秋山理央/写真 朴順梨/文
師走のある日。仕事場に向かう途中、偶然、日の丸や日章旗を掲げた一団に出くわした。のぼりに書かれているのは、これまで在日コリアンやアイヌ民族に対して何度もヘイトスピーチデモを行ってきた団体名だ。近づいて写真を撮ると、ひとりが私に気づき「あー、リカちゃんだー」と嬌声を上げた。それを皮切りに20人ほどの男女が「バカ女」「化粧くらいしろよ」と静かな住宅街で罵声、怒声を上げ始めた。
これが2015年の日本、オリンピックを5年後に控えた東京の風景なのだ。
私はヘイトスピーチへの抗議をネット上やたまには路上で行っているので彼らから目のかたきにされているが、“多数派”の日本人だから何を言われても痛くもかゆくもない。ただ、彼らが攻撃の標的にしている在日外国人、沖縄やアイヌの人々、さらには障害があって働けない人たちは、文字通り身も心も凍りついているに違いない。
路上には、彼らに猛然と抗議し、罵声や怒声を少数者にではなく自分たちに向けさせようとしている“カウンター”と呼ばれる人たちがいる。正式な組織があるわけではないが、排外主義的なデモが行われるとネット上の呼びかけにこたえて数十人、数百人が現場に集結する。プラカードや横断幕を示し、ときにはデモ以上に大声を上げるカウンターの姿勢を、問題の深刻さをわからない人たちは「下品だ」などと言うが、そうやって声や身ぶりで抑え込まなければ、規制法もいまだない日本では、ヘイト集団のデモは止められないのだ。