「日本病」はもはや対症療法ではどうにもならない
「日本病」金子勝、児玉龍彦著
経済学者と医学者がタッグを組んで日本を“診断”。たいへんな意欲作である。ただ、「3分でわかる」とはいかない。
本書で縦横無尽に語られる政治、経済、雇用、福祉などの論点を理解するには、数字やグラフとも多少は向き合わなければならない。また、社会問題と生命科学の理論とのアクロバチックな接続も、決してわかりやすくはない。それでも、本書で展開されるまさに「日本病」と言うしかない構造的な病理の読み解きはたまらなく刺激的だ。
多少ネタバレになってしまうが、著者らは「日本病」の処方箋として「バイアスのないデータと情報の公開」と「民主主義的な意思決定プロセス」を挙げる。いまはそれがまったく機能していない。だから、アベノミクスについてだけを見ても、実は「目標は達成されず、官製相場で株高を演出し、年金財政を破綻に巻き込み、株式市場の外資化を招き、大企業の内部留保と配当だけを膨らませ、貿易赤字を常態化させている」にもかかわらず、「フィルターをかけた大量のデータが『アベノミクスの成功』として政府から垂れ流しにされ」、私たちはまんまとそれにだまされる、などという事態になっているのである。